木造で地震に強い家を建てるポイント|鉄骨造・RC造と比べたメリットも解説
このコラムでは、木造で地震に強い家を建てるためのポイントを分かりやすく解説します。
2016年の熊本地震、2024年の能登半島地震での木造住宅の被害状況や、耐震等級3を取得する有効性、鉄骨造・RC造と比べた地震への強さなども紹介。
建築コストやデザイン・間取りと耐震性能のバランスがとれた木造住宅を建てたいとお考えの方は参考にしてくださいね。
コラムのポイント
・地震に強い家は、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などの構造や、在来軸組、ツーバイフォーなどの工法に関係なく実現でき、どの構造でも耐震等級3の取得が可能です。
・2016年熊本地震と2024年能登半島地震の被害調査から、2000年基準以降の木造住宅は倒壊率が低く、耐震等級3であればさらに被害を抑えるのに有効であることが分かっています。
・木造住宅で地震に強い家を建てるなら、「耐震等級3を取得しつつ希望の間取りやデザインが実現できるか」を、ハウスメーカーや工務店と相談しながら家づくりをするのがおすすめです。
Contents
木造と鉄骨造・鉄筋コンクリート造は耐震性に差がある?
家づくりを検討中で、木造、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)など、住宅の構造や工法の違いによって耐震性に差があるのか気になっている方も多いかもしれません。
建築基準法における現行の耐震基準では、建築物は「構造・工法にかかわらず、震度6強~7程度の大規模地震でも倒壊・崩壊しないようにする」ことが定められています。
したがって、「木造だから他の構造より耐震性が低い」ということはありません。
木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などの構造や、木造住宅の在来軸組、ツーバイフォー、木質パネルといった工法に関係なく、高い耐震性を持つ住宅は実現可能です。
「耐震等級」を上げることでさらに地震に強い家になる
「震度6強~7程度の大規模地震でも倒壊・崩壊しない」という現行の耐震基準は、建築基準法によって定められた、最低限求められる耐震性能です。
現行の耐震基準は「2000年基準」とも呼ばれ、1995年の阪神淡路大震災を受けて建築基準法改正でできたものです。
2000年基準ではそれまでの「新耐震基準」に加えて、「耐力壁のバランス」や「柱の引き抜きを防ぐ金物」などの基準が定められており、木造住宅の耐震性能向上において重要な基準となっています。
さらに現在は、住宅性能表示制度の「耐震等級」という基準があり、建築基準法の耐震基準(2000年基準)は「耐震等級1」に該当します。
耐震等級は最大3まであり、等級が高くなるほど耐震性の高い家になります。
等級 | 耐震性 |
---|---|
耐震等級1 |
・建築基準法の耐震基準と同程度の耐震性 ・百年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度6強~7相当)に対して、倒壊・崩壊しない ・数十年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度5強相当)に対して、損傷を生じない |
耐震等級2 |
・耐震等級1の1.25倍の耐震性 ・災害時の避難所として使用される学校などの公共施設は等級2を満たす必要がある |
耐震等級3 |
・耐震等級1の1.5倍の耐震性 ・警察署や消防署などは等級3を満たす必要がある |
上記のように、等級2は等級1の1.25倍、等級3は等級1の1.5倍の耐震性能がある住宅ということになります。
現在の新築住宅では、構造や工法にかかわらず耐震等級3の取得が可能です。
耐震等級を上げる分、材料費や人件費がかかるため建築コストがアップしますが、繰り返し襲う余震を含む大地震が頻繁に起こっている日本では、「住宅は等級3がスタンダード」という考え方が主流になってきています。
熊本地震、能登半島地震の木造住宅被害の実態
平成28年(2016)年4月の熊本地震や、令和6(2024)年の能登半島地震で、木造住宅はどんな被害を受けたのか、政府の報告書を元にまとめます。
熊本地震では耐震等級3の木造住宅は「大部分が無被害」
平成28年(2016)年4月の熊本地震では、2回の最大震度7の地震を含め、震度6弱以上を観測する地震が計7回発生し、住宅をはじめとする木造建築物も被害を受けました。
国土交通省などが設置した「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」の報告によると、旧耐震基準の木造建築物は、新耐震基準導入以降に比べて倒壊率が顕著に高かったことが分かりました。
新耐震基準導入以降の木造建築物では、特に平成12(2000)年以降の建築物の倒壊率が低かったことが分かっています。
さらに、住宅性能表示制度に基づく耐震等級3の木造住宅には大きな損傷は見られず、その大部分が無被害だったことから、耐震等級3取得の有効性が調査統計からも明らかになっています。
〈熊本地震における木造建築物の建築時期別の被害状況〉
(出典)国土交通省|熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書 概要
能登半島地震では「2000年基準以前の新耐震木造住宅」も倒壊
令和6(2024)年の能登半島地震では、石川県能登地方の広い範囲において最大震度7の地震を含む震度6強以上の地震が多数発生し、木造建築物もその被害を受けました。
「令和6年能登半島地震における建築物構造被害の原因分析を行う委員会」によると、熊本地震と同様に、旧耐震基準の木造建築物の倒壊率が顕著に高かったことが分かりました。
また、1981年の「新耐震基準」以降の木造建築物も倒壊したという報告もあります。 新耐震基準以降の木造建築物では、2000年基準以降の木造建築物の倒壊率が0.7%と低くなっており、現行基準は今回の地震に対する倒壊・崩壊の防止に有効であったと認められています。
(参考)
国土交通省ホームページ|令和 6 年能登半島地震による木造建築物の被害調査報告(速報) 林野庁ホームページ|木造住宅の耐震性について
これから木造住宅を建てる場合は、当然この2000年基準をクリアした家になるため、能登半島地震と同規模の地震災害で倒壊に至る可能性は低いと考えられます。
熊本地震と能登半島地震の2つの被害報告を見ると、2000年基準以降の木造住宅は倒壊率が低く、耐震等級3であればさらに被害を抑えられているということが見て取れます。
木造住宅の地震力に対するメリット
木造住宅でも地震に強い家は実現可能であり、熊本地震や能登半島沖地震では、2000年基準以降、とりわけ耐震等級3の木造住宅は被害を最小限に抑えやすいということが、実際の被害状況からも分かってきました。
さらに、木造住宅は地震災害に対して、鉄骨造や鉄筋コンクリート造など他の構造よりも有利な点もあります。木造住宅の地震力に対するメリットについてまとめます。
①建物自体が軽いため揺れにくい
地震による揺れの大きさは、建物の重量に比例します。 鉄骨や鉄筋コンクリートに比べて軽量な木造住宅は、揺れによる建物への負担を抑えやすいというメリットがあります。
②しなやかさで揺れの力を逃がす
木材は曲げ(圧縮や引っ張る力)に対して強い、しなやかさのある素材です。
鉄やコンクリートは、一定以上の曲げの力が加わると突然折れたり欠けたりしてしまいます。木材はある程度までの曲げの力に耐え、変形してもまた元に戻るしなやかさがあります。
地震などで大きな曲げの力を受けた際も、変形しながら揺れの力を吸収して逃がし、損傷を抑えられるというメリットがあります。
③火災に対して一定の強度を維持できる
木材は、火災時に表面が燃えると炭化し、内部までの燃焼を抑える性質があります。
炭化によって、火災時に柱や梁などの構造がすぐに崩れることを防ぎ、非難・救助する時間を確保しやすいというメリットもあります。
軽くて強い木材の特性を生かし、耐震性能を十分に考慮して設計・施工すれば、"地震に強い木造住宅"は実現可能です。
また、鉄筋コンクリート造は耐久性が高く、大地震での倒壊リスクが低い構造ですが、建物に重量があるため地震による揺れを感じやすく、耐震性を上げるためのコストが割高になるデメリットもあります。
木造住宅は、他の構造よりも比較的低コストで耐震等級3の家を実現しやすい点もメリットと言えるでしょう。
木造で地震に強い家を建てるポイント
木造で地震に強い家を建てるために大切なポイントをまとめます。
地盤の強さとハザードマップを確認する
全ての建物は地面の上に建てられています。軟弱地盤や液状化リスクの高い土地を避け、強い地盤に建てることが、地震に強い家づくりの第一歩になります。
あらかじめ地盤の強さを調べるには、国や自治体のハザードマップや土地の成り立ち(過去の用途)などを調べることである程度予測できます。
(参考)
また、地盤調査を実施すれば、実際の強さを数値で確認できます。
現在は、住宅の新築時には原則として地盤調査が義務化されています。軟弱地盤だった場合は地盤改良工事をするケースもあります。
地盤改良工事には数百万円程度かかることもあるため、事前に地盤の状態を見極め、土地購入費用と合わせて予算オーバーしないように土地選びをすることが重要です。
「耐震等級3」が標準の建築会社を選ぶ
耐震等級3の木造住宅を建てるには、正しいシミュレーションに基づく設計と、現場での適切な品質管理による確実な施工技術が不可欠です。
木造住宅で耐震等級3の施工実績が豊富な、信頼できる工務店やハウスメーカーを選ぶことがポイントになります。
耐震等級3の木造住宅でも、住宅会社ごとにさまざまな工法がありますが、耐震等級3を取得できるのであればどの工法でも問題ありません。
予算や工期、実現できる間取り、デザインなどを考慮して、総合的に納得できる会社を選ぶようにしましょう。
なお、「等級3相当」の家は「自社の評価による等級3をクリアした住宅」であるため、第三者による証明がない点や、地震保険の割引、住宅ローンの金利優遇などが受けられない点などに注意が必要です。
立地や間取り希望による設計の制約に注意する
耐震等級3の基準を満たす設計にするためには、より厚い壁にしたり、柱や梁を太くして本数を増やしたりする必要があるため、敷地などの条件次第では、希望の間取りが実現できない場合があります。
耐震等級3が可能なメーカー・工法でも、敷地条件や希望の間取りなどによっては、「今回のケースでは耐震等級3を取得できない」という可能性がある点にも注意が必要です。
確実に耐震等級3の木造住宅を建てるということを重視するならば、「土地や間取り、設計の希望を伝えた上で、等級3が取得可能かメーカーに確認すること」や、「そのメーカーで等級3の家が建てられる土地を選ぶ」ことがポイントになります。
まとめ
地震に強い家は、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などの構造や、在来軸組、ツーバイフォーなどの工法に関係なく実現でき、どの構造でも耐震等級3の取得が可能です。
2016年熊本地震と2024年能登半島地震の被害調査から、2000年基準以降の木造住宅は倒壊率が低く、耐震等級3であればさらに被害を抑えるのに有効であることが分かっています。
木造住宅は、材料が軽量で揺れにくく、火災に対して一定の強度を維持できるなどのメリットもあります。また、RC造などと比べて低コストで耐震等級3を実現できる点も魅力です。
木造住宅で地震に強い家を建てるなら、「耐震等級3を取得しつつ希望の間取りやデザインが実現できるか」を、ハウスメーカーや工務店と相談しながら家づくりをすることで後悔を防げます。
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