災害に強い木造住宅の特徴|地震・台風・水害に負けない住まいづくりのポイント
近年、日本では震度7レベルの地震やゲリラ豪雨などの自然災害が頻繁に起こっており、災害に強い家づくりの必要性が高まっています。
このコラムでは、災害に強い木造住宅を建てるために知っておきたいポイントや、ハウスメーカー・工務店の選び方について解説します。
地震はもちろん、さまざまな災害に備えた住まいを実現したい方は参考にしてくださいね。
コラムのポイント
・災害に強い家を建てるためには、災害リスクを踏まえた土地、建物形状・間取りの選択や、劣化対策、メンテナンスのしやすさなど、さまざまな視点から考えることが重要です。
・地震や豪雨被害の増えている日本では、災害時の被害を最小限に抑えるのはもちろん、災害後も今の家に住み続けられるという視点での家づくりも求められています。
災害に強い家とは?
災害に強い家とは、地震や台風、水害などの自然災害への備えがある住宅を指します。
災害に強い家づくりをするなら、さまざまな視点で災害リスクを減らすような選択をしていくことが重要になります。
〈災害に強い家づくりで重要な要素〉
- ・土地・立地
- ・住宅構造
- ・形状
- ・間取り
- ・災害に備えた設備 など
次章からは災害に強い家(木造住宅)づくりの具体的なポイントを解説します。
災害に強い木造住宅を建てる9つのポイント
地震や台風、水害、火災などのさまざまな災害に強い木造住宅を建てるためには、以下のポイントを意識した家づくりが必要です。
- ①災害の影響を受けにくい立地を選ぶ
- ②耐震性の高い家づくり
- ③台風に強い家づくり
- ④水害に強い家づくり
- ⑤火災時の安全確保対策
- ⑥災害に強い間取りの工夫
- ⑦災害時に役立つ仕様・設備を採用する
- ⑧建物の劣化対策
- ⑨適切なメンテナンスの実施
1つずつ具体的に必要な対策を解説していきますね。
①災害の影響を受けにくい立地を選ぶ
災害に強い家づくりの第一歩は、地盤の強さや地域の特徴などを踏まえて、地震に強く、水害リスクの低い土地を選ぶことです。
地震に強い立地のポイント
地震に強い家づくりの基本は、強い地盤の上に建てることです。
地盤の良し悪しはエリアの地形、地質などさまざまな要素が関連してきますが、主に次のような特徴で見分けられます。
〈地震に強い地盤の特徴〉
- ・地層が古く、固く締まった地盤(台地や丘陵地など)
- ・標高が高く地下水位が低い(液状化のリスクが少ない)
逆に、以下のような地盤は地震時に建物被害が大きくなったり、液状化したりするリスクが高くなります。
〈注意が必要な地盤の主な特徴〉
- ・新しい地層の低地 →軟弱かつ不安定な地盤が多い
- ・切土と盛土が混在している造成地 →切土と盛土で地震時の揺れ方が異なり、建物にねじれが生じることがある
- ・砂質地盤 ・砂を使った埋立地 ・昔河川だった地域(水に関する地名がついていることも多い) ・地下水位が高い地盤 →液状化のリスクがある
上記のような地盤を持つ土地はできるだけ避けるか、地盤改良工事で改善できるかを検討する必要があるでしょう。
土地情報サイトやハザードマップで、土地の成り立ちや地盤の弱いエリアをあらかじめ調べておくと、リスクの高い地盤を避けて土地選びができます。
(参考)
ハザードマップポータルサイト|国土交通省
国土地理院ホームページ|土地の成り立ち・土地利用
水害に強い立地のポイント
近年、集中豪雨等による水害が頻発しており、短時間での河川の増水や、堤防決壊によって甚大な被害が発生する事例も増えてきています。
これからマイホームを新築するなら、以下のような水害に強い立地を選ぶことも重要になります。
〈水害に強い立地の特徴〉
- ・海や河川から離れている
- ・周辺と同程度、または少し高めの場所
- ・埋め立て地でない
国が公表しているハザードマップは、地震以外にも水害関連のリスクが高い場所を調べられます。
ハザードマップで土砂災害警戒区域や洪水浸水想定区域に指定されているエリアは、台風や大雨による浸水被害、土砂災害のリスクが高いため、できるだけ避けることをおすすめします。
②耐震性の高い家づくり
災害に強い地盤を選ぶことに加えて、建物自体の耐震性を高めることも有効です。
建物の地震への強さを表す指標として「耐震等級1~3」があり、等級が高いほど地震に強い家になります。
建築基準法の最低基準である耐震等級1では「震度5強相当の地震力によって建物が損傷しない」性能に対し、等級3は「等級1で耐えられる1.5倍の地震力に対して損傷が起こらない」性能となります。
特に、耐震等級3の木造住宅は、震度7の地震が短い間隔で2回起こった2018年の熊本地震でも被害が少なかったという調査結果があります。
大地震後も軽微な補修で住み続けられる家にするなら、耐震等級3で建てることをおすすめします。
③台風に強い家づくり
台風に強い家づくりには、外壁や屋根の損傷や雨漏りを防ぎ、屋根や雨樋が強風で吹き飛ばされないような対策が必要です。
住宅の風に対する強さを表す指標として「耐風等級」があります。耐風等級は住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)で規定されている基準で、暴風に対する構造躯体の倒壊、損傷のしにくさを評価・表示したものです。
耐風等級1 | 500年に1度程度の極めて稀な暴風で倒壊せず、50年に1度程度の稀な暴風でも損傷しない強度 |
---|---|
耐風等級2 | 耐風等級1の1.2倍の耐久性能 |
500年に1度発生する程度の極めて稀な暴風とは、東京近郊住宅地の高さ10mの位置で平均風速が約35m/s、瞬間最大風速が約50m/sの暴風に相当します。
(参考)一般社団法人住宅性能評価・表示協会|地震などに対する強さ(構造の安定)
建築基準法の最低基準は耐風等級1ですが、より台風に強い住まいにするなら、等級2の基準を満たす家づくりを検討しましょう。
耐風等級も考慮した、台風に強い家の設計の工夫は以下のようなものがあります。
- ・外壁や屋根の強度、防水性を高める
- ・奥行きの広い軒や庇は柱で補強する
- ・窓に強化ガラスを採用する
- ・雨戸やシャッターを設置する
- ・平屋建てにする
④水害に強い家づくり
豪雨や洪水などによる住宅への浸水被害を抑える設計のポイントは以下のようなものがあります。
- ・基礎部分を高くする
- ・1階をガレージにする
- ・住宅を高い塀で囲む
- ・防水性の高い外壁を採用する など
また、いざという時の雨漏りや浸水を防ぐには、設計の工夫とともに、屋根や外壁の再塗装や、側溝や雨どいの清掃などの定期的なメンテナンスも欠かせません。
⑤火災時の安全確保対策
延焼・類焼の被害が拡大する可能性のある都市部(住宅密集地)で家を建てるには火災対策が必須です。
木造住宅の火災対策には以下のようなものがあります。
〈周囲からの延焼(もらい火)防止〉〈室内間の延焼防止〉
- ・屋根や外壁、軒裏に防火性の高い材料を使用する
- ・防火戸、防火シャッター、網入りガラスを使用する
〈安全対策〉
- ・防火性の高い内装材、インテリアを使用する(石こうボード、防炎カーテンなど)
- ・延焼を抑えるファイヤーストップ構造を採用する
- ・火災報知器、消火器の設置
- ・隣戸に通じるバルコニーなど避難経路を確保する
木造住宅は他の構造より火災に弱い?
結論として、木造住宅だから火災に弱いということはありません。適切な計画、施工が行われていれば他の構造と同じように火災の被害を抑えられます。
柱や梁のような断面の大きな太い部材で考えると、木材は内部まで燃えるまでに時間がかかり変形しづらい点で火災に強い特徴があります。火災時に一定時間は倒壊に耐え、避難する時間を確保できます。
さらに、近年は技術の進化で、木質系の不燃材料や耐火構造部材も豊富なため、RC造などと比較して同等程度の火災に強い建築物は実現可能となっています。
⑥災害に強い間取りの工夫
同じ構造・工法でも、建物形状や屋根の構造がシンプルなほど災害に強くしやすいと言えます。
地震や豪雨などの災害に強い家にするための間取りの工夫は以下のようなものがあります。
- ・箱型など凹凸の少ない建物形状にする
- ・オーバーハングや大開口のある間取りを避ける
- ・1階と2階の柱・壁の位置を揃える
- ・建物が軽く高さが低い平屋にする
- ・複雑な屋根形状を避け雨漏りを防ぐ
方法によっては間取りに制限が出たり、建築コストが多めにかかったりすることもあります。暮らしの希望と建物強度のバランスを考えて間取りを検討することがポイントです。
⑦災害時に役立つ仕様・設備
災害に強い家にするには、地震や台風による被害を抑える仕様や、停電などライフラインが止まった時に役立つ設備を導入することも効果的です。
〈災害時に役立つ仕様・設備の一例〉
- ・埋め込み型収納、造作家具…地震で倒れてくる心配がない
- ・シャッター・雨戸…雨や飛来物をシャットアウトする
- ・合わせガラス…台風時の飛来物による被害を軽減
- ・パントリーなど…防災用品や備蓄のスペースとして
- ・太陽光発電、蓄電池、V2H…停電時に役立つ
- ・貯水タンク、エコキュート…少ない電気で効率よくお湯を沸かせる
- ・停電時でも使えるトイレを採用する
⑧建物の劣化対策
住宅の耐震性能、耐風性能などが正しく発揮されるためには、建物自体が劣化しにくいことも重要です。
木造住宅の劣化を抑えるには、水分や湿気による木材の腐朽防止やシロアリ対策が欠かせません。
住宅性能表示制度や長期優良住宅では建物の「劣化対策等級」が定められています。等級は1~3まであり、構造躯体の材料の劣化を遅らせるための対策がどの程度講じられているかで評価します。
〈劣化対策等級の基準〉
等級1 | 建築基準法で定められた劣化対策 |
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等級2 | 2世代(約50~60年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策が講じられている |
等級3 | 3世代(約75~90年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策が講じられている |
※日常の清掃、点検、補修をある程度実施した上で、通常の自然条件が継続することなどを前提とする
(参考)一般社団法人住宅性能評価・表示協会|住宅性能表示制度について|柱や土台などの耐久性(劣化の軽減)
等級3の木造住宅では以下のような劣化対策を行います。
- ①外壁の軸組等の防腐・防蟻
- ②土台の防腐・防蟻
- ③基礎の高さ(40cm以上)
- ④床下の防湿・換気
- ⑤小屋裏の換気措置
- ⑥浴室・脱衣室の防水
- ⑦地盤の防蟻
- ⑧建築基準法の劣化の軽減に関する規定を満たした構造部材等を使用する
劣化対策等級が高いほど、家が長持ちするため、災害への強さに関する住宅性能も長く発揮しやすくなります。
⑨適切なメンテナンス
住宅は定期的に適切なメンテナンスをすることで、建物の耐震性や耐風性などを維持できます。
例えば、外壁のひび割れや基礎の補修、屋根材の再塗装や交換工事も、家を長持ちさせるための大切なメンテナンスです。
普段の掃除や点検以外に、5~10年単位で専門家による定期点検を実施し、必要に応じて適切に再塗装や補修などをしていくことで、長く安心して住める家になります。
災害に強い家を建てるハウスメーカー・工務店選びのポイント
災害に強い家づくりをかなえるための、ハウスメーカーや工務店選びのポイントをまとめます。
耐震等級や耐風等級の取得に対応できる
地震や豪雨の頻度が増えている昨今、耐震等級3や耐風等級2の認定が取得可能な住宅会社との家づくりをおすすめします。
耐震等級3の中でも、「許容応力度計算による耐震等級3」を取得できる会社なら、震度7レベルの地震での損傷被害を抑え、地震後も住み続けられる家づくりができます。
地域の特性を理解した家づくりができる
地域や地形などによってリスクの高い災害は異なります。
施工エリアの特性や土地の歴史などを熟知しているハウスメーカーや工務店を選ぶことで、適切な災害対策を施した家づくりができます。
ホームページや見学会、セミナー等で災害対策について確認し、予算も考慮して最適な提案をしてくれる建築会社を選ぶことが重要です。
アフターメンテナンス体制が充実している
住宅が耐震性や耐風性などの性能を長く、正しく発揮するためには、定期的に構造や屋根、外壁などの点検を実施し、必要に応じて補修などで対応していくことが必要です。
建築会社を検討する際は、長期保証や定期点検などのアフターサービスやメンテナンス体制も必ず確認しましょう。
まとめ
災害に強い家を建てるためには、災害リスクを踏まえた土地、建物形状・間取りの選択や、劣化対策、メンテナンスのしやすさなど、さまざまな視点から考えることが重要です。
地震や豪雨被害の増えている日本では、災害時の被害を最小限に抑えるのはもちろん、災害後も今の家に住み続けられる性能が求められていると言えるでしょう。
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